37歳になって急に勉強するのが速くなった気がして、焦ることがなくなった

リチャード 伊真岡 blog

37歳になって急に勉強するのが速くなった気がして、焦ることがなくなった

興味があるソフトウェア技術の分野がどんどん増えるんだけど、自分が新しいことを学ぶスピードがあまりにも遅くて、全く追いつかないことに長年悩んでいました。しかし今年37歳になって急に勉強スピードが上がって解決しました。本当に急に変わってしまったのです。あくまで主観の話ですが、13年職業エンジニアをやって、37歳にして突然変わる人もいることを知ってもらえれば。

謎の自信

ソフトウェア技術者をやっていると、年を追う毎にどんどん学びたいことが増えていく人が多いと思います。モバイル、クラウド、フロントエンド、バックエンド、機械学習、インフラ…それぞれの分野で新しいソフトウェアやサービスが次々に出てきて、かつ手を出せばすぐに触れる距離にあります。好奇心を刺激するだけならいいのですが、あまりに自分のレーダーに引っかかる数が多すぎて、焦燥感を覚える人も多くいるでしょう。それではダメだと思い、新しいものを追いつづけるのをあきらめ「10年通用する技術を身につける!」と思っても、10年通用する技術を学ぶのに15年かかってしまうことはよくあるものです。

ここから私の話ですが、最近は「2、3ヶ月頑張れば仕事で使えるレベルになる」と感じる分野が増え、実際に直近のプロジェクトでは1ヶ月程度でGoogle Apps ScriptとKintone APIを学び「マスターした」というには程遠いですが、それぞれの制限やクセをつかんだ上でコードを書いていました。

GitHub履歴

なぜ勉強するスピードが上がったのか

最初の理由は、技術広報を1年続けたことで、技術調査のスキルが上がったからです。公式ドキュメントや参考文献を確認、自分でソースコードを書いて動作確認、というサイクルを回すのがうまくなりました。

新しく学ぶ分野もキャッチアップが速くなり、昔のように「勉強が進まないから、かえって同じ勉強法にこだわり、ハードワークで乗り切る」という悪循環に陥らなくなりました。今はだいたい下図のようなイメージで勉強の習熟フェーズを捉えています。自分がどのフェーズにいるか意識することで、教材の「選球眼」がよくなりました。フェーズと教材によって「これは今すぐ2割くらい理解したい」「こっちは後で時間をかけて5割くらい理解したい」などと自在に切り替えています。

GitHub履歴

習熟フェーズも一直線に右に進むイメージではなく何度も同じ教材を見直すので、最初から完全に理解する重圧も感じなくなりました。2度3度読み返すと、楽に理解が深まる感覚があります。これは言う易しで、昔から「1回で100%理解はできない」と頭ではわかっていたものの、どのあたりで手を抜くかのさじ加減がつかめたのは今年からです。

手を動かして学ぶ方法も上達し、ソースコードをただ写経するだけでなく、書き換えてわざとバグを起こす(限界を試すことで理解が深まる)パターンを思いつきやすくなった、あるいは文章を図に起こす、重要部分をメモに要約、メモが溜まったらブログで公開、など様々な方法で理解を深められるようになりました。これには最近英語の勉強で「細切れ時間に反復練習をする」コツをつかんで、ソフトウェア技術の勉強にも応用しています。

他の理由として「最初からベストな選択肢を探す」のをやめたをことも大きいです。昔は「Gatsby.jsとNext.jsのうち優れている方だけを学びたい」などと思っていました。そうすると早い段階で技術選択に関する情報を集め始めるのですが、この効率が悪かったのです。技術選択は高度な判断なので最初に正しい判断はできません。選択肢が複数あれば1つずつ順番に学び、それぞれに詳しくなった段階で技術選択する方がはるかに早く正しい判断ができることがわかりました。

最後の理由ですが、昔からいろんな技術をつまみ食い的に勉強してきたことが、今になって知識の土台としてつながってきた感覚があります。以前私は「フルスタックエンジニア」という存在を「単なる誇張」と思い信用してきませんでした。最近になって「マルチスタック」ぐらいなら現実的にありえる気がしています。「自分には胸を張って専門分野と言えるものがない」と思っている人でも、そのうち学んできたたくさんのことがつながる瞬間が来るかもしれません。一分野に集中するのと違って、長い年月がかかるでしょうし、必ずその瞬間が来るとは断言できないのですが…。

以上の変化がピタッと噛み合って、急に今年から違う感覚で勉強を進められるようになりました。

私は学生時代から勉強の効率が悪く、他の人より長い時間を書ける以外の方法がなかったタイプの人間です。たまたま過去の経験がうまく合わさって、今年は良い勉強サイクルを維持できています。いつまでこれが維持できるかはわからないですが、同じように悩んでいる人が「いつかパッと道がひらける感覚がおとずれる」かもしれないと背中を後押しされた気持ちになってもらえれば幸いです。